先月、ハノイのベトナム人女性が外国人の元交際相手に襲撃されガソリンをかけられて火をつけられるという事件がありました。女性は重症で、その火傷は命に関わると伝えられています。この衝撃的なニュースは問題の普遍性の思い起こさせました。それは、性に基づく暴力には安全な場所がないということです。世界中で起こっている#MeTooの動きは、性虐待や暴力の横行を強調しています。
このケースは極端な例かもしれませんが、女性に対する暴力があまりにもありふれているということを再確認するきっかけとなりました。2010年の国の調査では、既婚女性の3人に2人が今までに暴力を受けたことがあると言います。被害者のうちおおよそ50%が暴力を受けたことを内緒にしており、87%は公共サービスに助けを求めたことがないそうです。さらに、最近の小規模調査では、ベトナムで横行している女性に対する暴力が様々な形になっていて、若者の交際関係でも起きているようです。
このような暴力は性の不公平性、区別、有害な文化的・社会的規範に深く根付いていて、女性平等の大きな壁の一つとなっています。上記のケースは、被害者、家族、コミュニティにひどい傷を残しました。根本的な力の差を認識することは、暴力を終わらせるためには重要なのです。要するに、性に基づく暴力は避けられないものではなく、私たちはどんな暴力も我慢してはならないのです。
ベトナムや多くの国々は、実施は難しいにも関わらず、女性や女子への暴力に関する法律を定めています。暴力から逃れてきた人のためのサービスがあっても、実際に被害者が必要としているサービスを提供できているところは稀です。「レイプの裁判:タイとベトナムの性暴力に対する刑事司法制度を理解する(原題: Trial of Rape: Understanding the criminal justice system response to sexual violence in Thailand and Viet Nam)」や「女性の司法認識の研究:暴力を受けた女性による刑事裁判の利用について(原題: Women’s Justice Perception Study: Access to criminal justice by women subjected to violence)」などの国連の最近の研究には、被害者たちが守られてると感じたり、司法の判断によって矯正されているとは感じないようです。
これらのギャップに対し、ベトナムの国連は、世界共通のプログラムである暴力を受けた女性と女子のためのエッセンシャル・サービスを、ベトナム政府とともに昨年の11月に新たなプログラムとして着手しました。このプログラムは全体論や暴力被害者の権利を守るための多面的なメカニズムの発展、安全性を最優先させるための技術的な補助を導入しました。また、利用者目線で、健康、司法、警察の質と平等を見直し、社会授業を発展させました。同時に、加害者に対する司法の判断をより明確なものにし、女性や女子への暴力があってはならないというメッセージを強く持った判断になってきています。
良いニュースは、女性に対する暴力への必要なサービスはそこまでコストがかからないということです。一方で、2013年の国連ウィメンによる研究によると、女性への暴力の結果、全体的な生産性の低下や支出と失われた所得の合計はベトナムのGDPの3.2%にもなると言われています。
国連ウィメンとUNFPAはベトナムと協力し、女性に対する暴力を一切なくすための法と条例の整備に取り組んでいます。どの暴力事件も、あまりに多い事件の1つなのです。どの事件も、より多くの対応が必要であるということを思い知らせてくれます。持続可能な開発のための2030アジェンダに則して、私たちは誰も暴力の恐怖にさらされていない世界の実現に向けて努力しなければならないのです。